全て私のシナリオ通り

バイクの後ろに乗って駅に向かう女子高生を見た。この時間まだ朝は始まっていなくて、黄昏や自惚れ混じりの救い用の無い気分を知ってか知らずか、やる気の無い脚は無意識に誘導されて駅に向かう。
カーディガンを腰に巻いた女子高生を横目にみてる間に改札をくぐってしまい、ひるむ。
反対方向のホームを一瞬惨めな表情で睨みながら、死んだ視線を残しつついつものホームに向かう。
もしも反対方向の電車がえんえんと長く長く続く電車であったなら、と思う。(実際は10駅も続か無いのだ。)

ずるずるといつものように整列乗車、髪さえあればそれなりに可愛らしいであろう妖怪のように髪が剥げている年齢不詳の女の人を見る。

さあどうするか、どこか知り合いの家でもいこうかと思
う。同時に私に知り合いなんぞいなかったことを思う。ここまで全てが演技。

お気に入りのオーバーオールに、あまり着ないTシャツを着た時からもう私に気持ちなんて無い。もっと言えば、気持ちなんてなかったから特に興味の無いTシャツを着た。


妄想はいつも決まったパターン。皆が振り返るような美少女、白く透明で華奢でサラサラと細い髪。どんな靴でも当たらない足。
真っ白なキャミソールワンピースに、いつか見て一目惚れしたツモリチサトの赤いハイソールサンダル。
細く白い体だったらなんて素敵に履けただろうと思う。あの時私が買わなかったのは、高かったからと、それから私が履いたんじゃ理想からかけ離れてしまうとよくわかっていたから。もし私が私の理想とする姿であったら、3万以上するそれをなんとしてでも手にしていたと思う。


いつかのアンケートで「時々脈が早くなる時がある、脈を意識する時がある」に円をつけたら、学校の内科検診でいかにも不気味なジジイという感じのお医者さんに割り振られた、周りの女の子は男の人いやだなんて目を潤ませて女医さんを見ながらザワザワとして、結局おっさんのところに振り分けられていく。
本当にみんな嫌なのだろうか?

いかにも不気味なジジイは私の心音を聴いて別に平気だねぇと笑う。私は相変わらず冷めた顔をしている。
もし心臓が早くなったらすぐに保健室にいって見てもらいなさいなんて言われる。
無理に決まってるだろ、はっはっと脈を感じて身震いをして、教室を出て一番遠いところにある保健室に向かうまでに私の脈は正常になってしまう。外の空気は私に強く沁みすぎるから。きっと保健室にたどり着く前に私の体は学校の門をくぐってしまうだろう。


物を吐き続けていると体が熱を持って熱を持って、ああ辛い辛い辛いと体をよじりはじめる頃には喉を掻っ切るようなうめき声と、油汗、それから全身を襲うくっきりとした寒気に襲われる。もう手の甲をつたう吐瀉物すら感じない。何もかもどうでもいい。とにかく辛い、辛い辛い辛い。でも吐き続けることしか選べない。もうわけがわからない。
激しい熱と、頭痛と腹筋の痛み、体が壊れそうな程の寒気を感じ目の前が本当に白くなる。白は数秒の間に視界の両端から中心に向けて一瞬でしゅわあと消えていく。
ああ死ぬところだったと我に帰る。死ぬのはなんて体力を使うのだろう。



ある一時の体験、その時の何かが印象的で、その印象と同じ印象を受ける何かを見かけると胸焼けがする。